はじめに:読者の皆さまへの感謝
先日、『タヌキのカナモノヤ』をラジオでご紹介いただいた際には、リスナーの方から「一針一針に手間と愛情が詰まっているのが伝わります」というお言葉をいただきました。画面越し、電波越しでも、中南米のモラとガーナのアップリケの温もりが届いているのだと思うと、胸がいっぱいになります。
今日は、そんな『タヌキのカナモノヤ』の制作裏話と、私がモラとアップリケに込めてきた想いについてお話しさせてください。
モラとの出会い──南米雑貨店で心を奪われた日
私と針仕事の付き合いは、小学1年生にまで遡ります。家にあった布が気になって仕方なく、家族の服を勝手に切っては縫い合わせ、こっぴどく叱られたこともありました。それでも針と糸を持つ時間が好きで、ずっと手を動かしてきました。
そんな私がモラと出会ったのは、ある南米雑貨店でのこと。パナマの先住民クナ族に伝わるこの手芸は、何枚もの色鮮やかな布を重ね、上から順に切り抜いて模様を浮かび上がらせる技法です。
店頭に並んでいたモラの作品を見た瞬間、その色彩の力強さに心を奪われました。赤、オレンジ、黄色、青──重なり合う布から生まれる深みのある色は、絵の具では決して出せないもの。思えば「この技法で絵本を作りたい」という夢が、その日から始まっていたのかもしれません。
モラ刺繍の魅力──時間が生み出す奥行き
モラの制作には、とにかく時間がかかります。
まず、土台に布を重ねます。そこに下絵を描き、上の布から少しずつ切りながら縫っていく。切り口は細かくたてまつり縫いで始末し、下の布の色を見せていきます。更にその上に布を重ねて、また少しずつ切りながらたてまつり縫いをしたり、時にはピンキングばさみで切ったようなギザギザのラインにする事もあります。一つのモラを完成させるまでに、3ヶ月以上かかることも珍しくありません。
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でも、この時間こそがモラの魅力だと私は思っています。布を重ねた分だけ色に奥行きが生まれ、手縫いの針目が温かみを添える。機械では絶対に再現できない、人の手だからこそ生まれる表情があるのです。
『タヌキのカナモノヤ』のこだわり
タヌキの表情に宿る感情
絵本の主人公であるタヌキの表情には、特にこだわりました。モラでは細かい表情を出すのが難しいのですが、目の周りの布の重ね方や、口元のカーブを何度も縫い直しながら、喜び、困惑、優しさといった感情を一つひとつ表現しています。
重なり合う色彩の世界
カナモノヤの店内に並ぶ道具たち。これらすべてを布で表現しました。特に象のもとへ鍋を売りにいく事を考えるシーンでは、黒にオレンジを重ね、タヌキの苦悩を作り出しています。
お知らせ:ブログから直接ご購入いただけるようになりました
このたび、当ブログ「SHINY BLUE」から『タヌキのカナモノヤ』を直接ご購入いただけるようになりました。
一冊一冊、心を込めてお届けいたします。中南米のモラと、ガーナのアップリケ、ぜひお手元で感じていただけたら嬉しいです。
ご質問やご感想がありましたら、お気軽にコメント欄やお問い合わせフォームからお寄せください。皆さまからのお声が、制作の大きな励みになっています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。



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